年に2回開催!徳川家康と今川義元ゆかりの「臨済寺」の特別拝観
徳川家康公が愛した隠居の地、駿府城。そして、家康公が元服の儀を行った静岡浅間神社。この二つの聖地からほど近い場所に、家康公の幼少期「竹千代」の原点ともいえる「臨済寺(りんざいじ)」があります。
通常時も山門をくぐり、階段を上った先の本堂前までお参りすることはできますが、年に二度、5月19日(今川義元公命日)と10月15日(摩利支天祈祷会)に限っては、建物の中へと入り、拝観することができます。 かつての人々が何を大切にし、ここでどのような思いで過ごしていたのか。建物内部に足を踏み入れ、当時の竹千代や義元たちに思いを馳せることができる貴重なひとときをご案内します。
目次

今川氏ゆかりのお寺
まずは、静岡市街地に刻まれた家康公の足跡を繋ぎましょう。晩年を過ごした「駿府城」や、人生の節目を刻んだ「静岡浅間神社」から歩みを進めることで、臨済寺での体験はより深いものになります。
ここで、今川氏の物語にも触れておかねばなりません。今川家は代々浄土宗を信仰していましたが、氏輝と義元の兄弟だけは、この臨済宗を深く信仰しました。五男として生まれ、本来は後継者になるはずのなかった義元。兄の急逝という運命の変転により、出家していた彼は還俗して家督を継ぐことになります。自身が修行に励んだこの禅寺を、義元は教育と政治の拠点として整えました。
氏輝と義元が迎えてくれる本堂「大方丈」
山門を抜け、特別拝観の入り口から建物内部へ進みます。最初に入る本堂(大方丈)には、今川氏輝・義元の木像が安置されています。 氏輝は義元の兄であり、義元の前の当主です。義元は当主就任後、氏輝の菩提寺を「臨済寺」と改め、後に徳川家康(竹千代)の師となる太原雪斎を招きました。桶狭間の戦い後、同寺は義元の墓所となったため、現在は兄弟の像が並んで安置されています。江戸時代、駿府が幕府の直轄地となった際も、家康から厚い庇護を受けました。 木像の傍らには、禅堂に安置されている本尊を再現した摩利支天の「再現像」が展示されています。本物に近い距離で、造形を細部まで観察することができます。
竹千代の「手習いの間」のある書院
本堂の次は書院へと進みます。拝観ルートの中で特に注目すべきは、徳川家康(竹千代)が幼少期を過ごしたとされる「手習いの間」です。 当時の竹千代は、今川家の親族に近い待遇を受け、太原雪斎から最高水準の教育を授けられていました。この部屋の造りからは、人質という立場にありながらも、極めて良好な環境で養育されていた当時の状況を伺い知ることができます。
また、手習いの間の天井には、竹千代を見守るように描かれた迫力ある龍の図があります。睨みをきかせる鋭い眼光をぜひその場で見てみてくださいね。
書院内には、今川義元や竹千代が使用したゆかりの品々も展示されており、当時の生活の一部を垣間見ることができます。
絶景の茶室「夢想庵」へ
さらに奥へ進むと、賎機山の急峻な斜面を活かして建てられた茶室「夢想庵」が現れます。山の地形と周囲の庭園が一体となった造形は、この寺院の大きな見どころです。
茶室へと続く階段を一段ずつ上るにつれ、目に入る景色の高さや角度が刻々と変化し、日常から切り離されているような感覚に包まれます。
階段を上りきった先にある茶室からは、眼下に広がる名勝である庭園や寺院の屋根越しに、遠く静岡駅方面の市街地までを一望することができます。
かつての文化人たちが集い、景色を愛でながら語らったとされるこの場所は、まさに「夢想」という名にふさわしい、夢のような茶室です。階段を下り、庭園側から見上げる景色に溶け込んだ茶室の佇まいも、圧巻です。
大休宗休と太原雪斎が祀られる「開山堂」
続いて、本堂とは別の建物である「開山堂」へと向かいます。ここには、臨済寺を開山した大休宗休(だいきゅうそうきゅう)と、今川・徳川両家に多大な影響を与えた太原雪斎(たいげんせっさい)の像が祀られています。
大休宗休は、京都の天龍寺や妙心寺で住持(じゅうじ)を務めた高僧です。今川義元に招かれて駿府に入り、臨済寺の開山および初代住持となりました。
摩利支天が祀られる「禅堂」
修行の核心部である「禅堂」には、勝利の神として武士たちの信仰を集めた摩利支天(まりしてん)が祀られています。ここは現在も「雲水(うんすい)」と呼ばれる修行僧が座禅を組み、寝食を共にする場所であり、当時のままに受け継がれている修行の生活風景を垣間見ることができます。
入口には文殊菩薩、奥には静岡浅間神社から移し安置された摩利支天と守護神たちが祀られています。秋の特別拝観の際には、大般若経を読み上げる「大般若転読祈祷会(だいはんにゃてんどくきとうえ)」が行われ、その儀式を見学することも可能です。諸仏に見守られながら、日々修行に励む雲水の姿に接することができる貴重な空間です。
公開日のみ受けられる御朱印
拝観の締めくくりには、特別拝観の日のみ授与される貴重な御朱印をいただくことができます。 御朱印は全3種類あり、その中の一つに記された「今川神廟(いまがわしんびょう)」は、特別公開日以外でも参拝可能な境内にある義元と氏輝の墓所を指しています。
この特別な一日を締めくくる記念として、受けてみてはいかがでしょうか。
なお、こちらの御朱印を拝受する際の納経料(代金)に定額はなく、参拝者の「志」として納める形となっています。
アクセス
臨済寺は、JR静岡駅から北へ約2.5キロメートルの場所に位置しています。
徒歩では45分ほどかかりますが、駿府城公園や静岡浅間神社といった周辺の史跡を巡りながら、歴史を辿って歩くのも面白いかもしれません。
公共交通機関を利用する場合は、JR静岡駅北口のバス乗り場(10番・16番)より、しずてつジャストライン「府内線」または「美和大谷線」に乗車します。「臨済寺前」バス停で下車後、徒歩すぐの場所に山門が現れます。
お車でお越しの際は、寺院専用の駐車場を利用することが可能ですが、特別拝観の日は大変な混雑が予想されます。ゆとりを持って参拝するためにも、公共交通機関の利用が推奨されています。
ライター紹介:大倉麻衣子
静岡県内の魅力を発信するライター。
神社仏閣や史跡を中心に、徳川家康公ゆかりの地をはじめとした、静岡市に残る歴史や伝承について、文献調査や現地取材を重ねながら、とくに各地に語り継がれてきた伝承や物語に注目して執筆しています。
地域に受け継がれてきた背景や物語を丁寧にひも解き、「歴史ツウ」になれるような情報をお届けします。
























