『東海道中膝栗毛』宿場グルメをめぐる静岡旅

弥次さん喜多さんが歩いた東海道とは

 

江戸と京都をつなぐ東海道は、江戸時代の人々にとって旅と文化が行き交う大動脈でした。

街道沿いには53の宿場が置かれ、旅人は宿に泊まり、名物を味わいながら道中を楽しみました。


そんな当時の活気あふれる様子をユーモアたっぷりに描いたのが、十返舎一九のベストセラー小説『東海道中膝栗毛』です。

 主人公の「弥次さん・喜多さん」が巻き起こすドタバタ劇は、当時の人々に「旅のワクワク」を伝え、空前のブームとなりました。 


静岡市内には、作中にも描かれた「江尻宿」「府中宿」「丸子宿」などがあり、今もなお江戸の情緒と旅の文化を体感することができます。 

『東海道中膝栗毛』宿場グルメをめぐる静岡旅

十返舎一九と静岡との縁

「丁子屋」所蔵の十返舎一九の木像
「丁子屋」所蔵の十返舎一九の木像
葵区両替町にある「十返舎一九生家跡伝承地碑 」
葵区両替町にある「十返舎一九生家跡伝承地碑 」
「丁子屋」の近くにある「十返舎一九 東海道中膝栗毛の碑」
「丁子屋」の近くにある「十返舎一九 東海道中膝栗毛の碑」

実は『東海道中膝栗毛』の生みの親である十返舎一九は、静岡市と非常に深い縁があります。

 一九は明和2年(1765)駿府(現在の静岡市葵区)の町奉行同心の息子として誕生しました。

現在の「両替町」周辺に生家があったといわれており、まさに静岡で育った感性が、後の名作を生んだといえるでしょう。


38歳で発表した『東海道中膝栗毛』は、江戸の庶民たちに「旅行ブーム」を巻き起こした画期的な作品でした。

珍騒動が繰り広げられる『滑稽本』として親しまれた本作ですが、各地の名所や名物が鮮やかに描かれ、現代でいう『ガイドブック』の役割も果たしていました。


また一九は執筆一本で生計を立てた「日本初の職業作家」としても知られています。

静岡市は、そんな十返舎一九ゆかりの地であり、『東海道中膝栗毛』の世界観につながる街でもあります。

静岡市内に残る宿場の名物グルメ4選

実は、現代でいう「アニメの聖地巡礼」のような現象は、江戸時代にも起きていました。


『東海道中膝栗毛』が爆発的にヒットしたことで、作中に登場する「丸子のとろろ汁」や「安倍川もち」を目当てに、多くの旅人がこれらを提供する店を訪れるようになったのです。

 当時の人々にとって、物語の舞台で主人公たちと同じ名物を味わうことは、何よりの贅沢であり楽しみでした。


今回は、作中で弥次さん喜多さんが味わった名物から、当時の旅人の間で定番だった隠れた名物まで、今も静岡市内で楽しめる宿場グルメ4選をご紹介します。 

名物グルメ① |追分羊かん

竹の皮に包んで蒸し上げる独特のスタイルは、今も変わらぬ伝統の姿です。
竹の皮に包んで蒸し上げる独特のスタイルは、今も変わらぬ伝統の姿です。

江尻宿の名物として名高い「追分羊かん」のルーツは、徳川三代将軍・ 家光の時代まで遡ります。

箱根の山中で倒れていた明(中国)の僧を介抱し、そのお礼に伝授された製法が始まりとされ、元禄8年(1695)に創業しました。 


その羊羹が東海道の往来が盛んになるにつれて旅人の間で評判となり、宿場を代表する名物へと成長を遂げました。

その人気は凄まじく、江戸幕府最後の将軍・十五代慶喜も、この味をこよなく愛したと伝えられています。

追分羊かんは「追分羊かん本店」や「大曲店」のほか、主要な駅の売店や近隣のサービスエリアなどでも幅広く取り扱われています。

追分羊かん本店

所在地静岡市清水区追分2-13-21
TEL054-366-3257
営業時間9:30~15:30
定休日日曜・月曜

※営業時間や定休日、料金など変更されている場合がありますので、お出かけの際は問い合わせ先にご確認ください。

追分羊かん本店

名物グルメ②|うさぎ餅

元々葵区鷹匠にお店がありましたが、今は工場のある西脇にお店を構えています。
元々葵区鷹匠にお店がありましたが、今は工場のある西脇にお店を構えています。
1つ150円とお手頃なお値段で、サイズ感もかわいい。
1つ150円とお手頃なお値段で、サイズ感もかわいい。
薄皮の中にこしあんがぎっしり入っています。あんこもほどよい甘さで絶品。
薄皮の中にこしあんがぎっしり入っています。あんこもほどよい甘さで絶品。

かつて「安倍川餅」「追分羊羹」と並び、駿河三大名物と称えられた「うさぎ餅」。

江尻宿と府中宿の間に位置する古庄がその発祥地です。


創業年は定かではありませんが、実は徳川家康がその誕生のきっかけを作ったと伝えられています。

当時、古庄で代々両替商を営んでいた前島家には見事な庭園があり、家康が鷹狩りの折に好んで休憩に立ち寄っていました。

ある時、供された餅の美味しさをいたく気に入った家康は、うさぎが飼われていたことにちなみ「うさぎ餅」と命名。

さらに焼き判まで贈り、「東海道を行く旅人の疲れを癒やすように」と販売を勧めたのが始まりと言われています。

この誕生秘話は、なんと前島家で代々語り継がれてきたお話。

その話を前島家の方が証言された記録も残っており、由緒ある「うさぎ餅」のルーツを裏付ける貴重なエピソードとなっています。


江戸時代から八代続いた前島家の看板は、その後、隣の吉田家へと器具一式とともに引き継がれ、長く街道の名物として愛されました。

1965年に後継者不在のため一度は惜しまれつつ廃業しましたが、1994年にこの伝統を後世に残そうと静岡伊勢丹が商標を登録。

1910年創業の老舗「松木屋」へ製造を託し、試行錯誤の末に当時の味が現代に蘇りました。


現在は、東名静岡インターからほど近い「松木屋」の店頭で購入が可能。

 家康公が愛した優しい甘みは、今もなお訪れる人々の心をホッと癒やしてくれます。



松木屋

所在地静岡市駿河区西脇1058-1
TEL054-284-2955
営業時間9:00~18:00
定休日水曜日

※営業時間や定休日、料金など変更されている場合がありますので、お出かけの際は問い合わせ先にご確認ください。

松木屋

名物グルメ③|安倍川もち

江戸時代後期に貴重な白砂糖をのせたことで評判が高くなった安倍川もち。「石部屋」では今も、きな粉の上に白砂糖をのせる当時のスタイルで、その歴史を伝えています。
江戸時代後期に貴重な白砂糖をのせたことで評判が高くなった安倍川もち。「石部屋」では今も、きな粉の上に白砂糖をのせる当時のスタイルで、その歴史を伝えています。
熟練の技が光る、「石部屋」15代目店主による手仕事 。注文を受けてから一つずつ丁寧に仕上げるため、驚くほどふんわりと柔らかい口当たりが魅力です。
熟練の技が光る、「石部屋」15代目店主による手仕事 。注文を受けてから一つずつ丁寧に仕上げるため、驚くほどふんわりと柔らかい口当たりが魅力です。
『東海道中膝栗毛』の喜多八さんが描かれた包装紙がやまだいちの安倍川もちの目印です。ちなみに『東海道中膝栗毛』の設定では、弥次さんは府中、喜多さんは江尻出身ですが、歌川広重の『東海道五十三次』では、それぞれ逆の宿場に描かれています。
『東海道中膝栗毛』の喜多八さんが描かれた包装紙がやまだいちの安倍川もちの目印です。ちなみに『東海道中膝栗毛』の設定では、弥次さんは府中、喜多さんは江尻出身ですが、歌川広重の『東海道五十三次』では、それぞれ逆の宿場に描かれています。
JR静岡駅直結の商業施設「パルシェ」食彩館1階 にある パルシェ「やまだいち」では毎日手作業で仕上げる安倍川もちが実演販売されています。
JR静岡駅直結の商業施設「パルシェ」食彩館1階 にある パルシェ「やまだいち」では毎日手作業で仕上げる安倍川もちが実演販売されています。

静岡土産の代名詞「安倍川もち」は、江戸時代に東海道をゆく旅人たちが安倍川の渡しを待つ間、茶店でこぞって買い求めた宿場町きっての人気グルメです。


その歴史は古く、徳川家康にまつわる粋な伝承が残っています。

慶長の頃に家康が井川御用金山の笹山金山に巡検に行った際、安倍川近くの茶店を訪れた家康に対し、店主が安倍川の砂金と金山の金粉に見立てて、つきたての餅にたっぷりと「金の粉(きな粉)」をまぶして献上しました。

家康が餅の名称を尋ねたところ、「安倍川の金粉餅」と答えたため、家康がその機智を誉め、その後「安倍川餅」と名付けられたとされています。


また十返舎一九の『東海道中膝栗毛』では、一皿「五文」で売られていたことから「五文どり」として登場しています。


現在、当時から続く伝統の味を唯一守り続けているのが、文化元年(1804)創業の「石部屋(せきべや)」です。

15代にわたり昔ながらの製法を貫き、店頭では職人がリズミカルに餅を丸める芸術的な手さばきを間近に見ることができます。

できたて特有のふんわりと柔らかく、それでいて程よい弾力のある食感は、一度食べれば忘れられない感動の味わいです。


また、旅のお土産には、パッケージに喜多さんが描かれた老舗「やまだいち」の安倍川もちが駅などで手軽に購入でき、おすすめです。


時を超えて愛される家康ゆかりの味を、ぜひ現地で、そして旅の思い出に堪能してみてください。

石部屋

所在地静岡市葵区弥勒2-5-24
TEL054-252-5698
営業時間9:00〜16:30(売り切れ次第終了)
定休日木曜(祝日の場合は前日)

※営業時間や定休日、料金など変更されている場合がありますので、お出かけの際は問い合わせ先にご確認ください。

石部屋

名物グルメ④ |とろろ汁

定番はとろろ汁に麦飯、味噌汁、香物、薬味がつく定食「丸子」
定番はとろろ汁に麦飯、味噌汁、香物、薬味がつく定食「丸子」
併設の歴史資料館では、宿場町の歴史を深く知ることができます。
併設の歴史資料館では、宿場町の歴史を深く知ることができます。

かつて東海道の難所といわれた宇津ノ谷峠を控える丸子宿。

ここで旅人たちの足腰を支えるスタミナ源として愛されてきたのが、滋味豊かな「とろろ汁」です。 


その魅力は、数多くの歴史的人物を惹きつけてきました。

かの有名な俳人・松尾芭蕉は「梅若菜 丸子の宿の とろろ汁」の一句を詠み、歌川広重の浮世絵『東海道五十三次』には「名物とろろ汁」の看板を掲げた茶屋が描かれています。

この絵のモデルとされるのが、慶長元年(1596)創業の老舗「丁子屋(ちょうじや)」です。


『東海道中膝栗毛』の弥次さん喜多さんもとろろ汁を求めて店に立ち寄りますが、運悪く店主の夫婦喧嘩に巻き込まれ、結局食べられずじまい。

喜多さんが「喧嘩する夫婦は口をとがらせて、鳶(とん)とろろに、すべりこそすれ」と狂歌を詠んだエピソードは有名です。


現在も丁子屋では、静岡県産の粘り強い自然薯を丁寧にすりおろし、自家製味噌とかつおだしで仕立てた伝統の味を楽しめます。

400年以上の時を超えて受け継がれる、丸子宿ならではの「本物の味」をぜひ体感してください。

丁子屋

所在地静岡市駿河区丸子7-10-10
TEL054-258-1066
営業時間月〜金/11:00〜14:00
土日祝/11:00〜15:00
          16:30〜19:00
定休日木曜日(毎月末のみ 水、木曜日連休)

※営業時間や定休日、料金など変更されている場合がありますので、お出かけの際は問い合わせ先にご確認ください。

丁子屋

現代の弥次喜多は「印」を集める!?「御宿場印」のすすめ

『東海道中膝栗毛』の弥次さん喜多さんの楽しみといえば、行く先々で名物に舌鼓を打ち、旅先ならではの非日常を賑やかに満喫することでした。そんな好奇心旺盛な二人が、もし現在の静岡を旅していたら……。

きっと名物グルメと一緒に夢中で集めていたであろうアイテムが、この「御宿場印(ごしゅくばいん)」です。


御宿場印とは、その宿場を訪れた証として手にすることができる特別な「旅の印」のこと。

東海道五十三次の各宿場町で、趣向を凝らしたデザインの印が販売されています。

今回グルメを紹介した「丸子」「府中」「江尻」の三宿でも、それぞれの歴史や風情を写した個性豊かな印が用意されています。 


「御宿場印帳」と「御宿場印」は、各宿場町エリアにある販売所にて購入できます。

静岡おでんやお茶がもらえる!? 「東海道中ふらり静岡たび」で楽しむ美味しい御宿場巡り

宿場町のおいしいグルメを堪能しながら、ぜひ一緒に楽しんでほしい注目のキャンペーンが始まります!

2026年9月18日(金)からスタートする周遊企画「東海道中ふらり静岡たび -手形をおともに御宿場巡り-」です!  


この企画では、たたむと可愛い手形の形になる「手形風マップ」を片手に宿場町を巡ります
マップを対象施設で提示するだけで、静岡茶や静岡おでんなど、各スポットが趣向を凝らして用意した「旅人特典」が受けられるんです!  グルメを楽しみながら特典ももらえるので、宿場町めぐりが何倍も楽しくなりますよ♪

\グルメ旅と一緒に使える「旅人特典」の一例/

  • 江尻宿:『エスパルスドリームプラザ 静岡工房』で清水すしミュージアム入場料半額!
  • 府中宿:『しずチカ茶店 一茶』で静岡茶1杯無料!  
  • 丸子宿:『天神屋 道の駅 宇津ノ谷峠下り店』で税込み150円の静岡おでん1個無料 

さらに、対象店舗で「御宿場印」を3種類あつめると、可愛いイラストが入った「オリジナル一煎茶パック」がもらえる嬉しい企画も実施。ぜひこの「手形風マップ」を手に入れて、江戸時代の旅人気分で巡ってみてくださいね! 




【イベント開催概要】

  • イベント名:東海道中ふらり静岡たび -手形をおともに御宿場巡り-  

  • 開催期間:2026年9月18日(金)~2027年1月31日(日)  

  • 対象エリア:静岡市(一煎茶パックプレゼントキャンペーンは藤枝市も含む)

  • 手形風マップ配布場所:各エリアの観光案内所等  

  • 詳細情報:詳細は公式ページ(VISIT SHIZUOKA)をご確認ください

まとめ

宿場を歩き、名物を味わいながら旅を楽しむ——その東海道の魅力は、まさに『東海道中膝栗毛』の世界そのものです。


「駿河三大名物」や弥次さん・喜多さんも食した丸子のとろろ汁に舌鼓を打ち、その宿場を訪れた証である「御宿場印」を集めれば、気分はさながら現代版の弥次さん喜多さん。


歴史と食が息づく静岡の宿場町をめぐり、江戸時代から続く“膝栗毛の世界”を五感で体感してみてはいかがでしょうか。

ライター紹介:松木 智美

静岡生まれ。

お茶、みかん、さくらももこ、海鮮など静岡に関するものが好きで、特に徳川家康公が大好き。


お城・史跡めぐりが趣味で、日本城郭検定1級取得、日本100名城、続日本100名城を制覇しており、色んな場所をめぐりながら城郭の魅力を発信しています。


静岡市にこんな魅力的なスポットがあったんだ!と思ってもらえるように皆さんにご紹介していけたらと思っています。よろしくお願いします!

ライター紹介:松木 智美
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