東海道一の絶景。今も昔も薩埵峠。
薩埵峠(さったとうげ) 東海道
歌川広重の『東海道五十三次之内』(保永堂版)で由比宿の様子を見れば、そこにあるはずの峠道はただの断崖絶壁で、左上にいる三人の人物は、傾斜角45度の斜面から今にも転落しそうに描かれる。ここがいかに難所だったか、広重は緊張感あふれる大胆な構図で表現したのだ。
難所だった薩埵峠を経ず、海岸線を安全に通行できるようになったのは、嘉永7年(1854年)の大地震で海岸が隆起してからだという。
現代ではその狹い海岸線に大工事が繰り返され、東海道本線、国道1号線、東名高速道路という、日本の大動脈が束ねられたようにして走っている。
富士山の眺望ポイントとしての人気は海岸線でも絶大だが、駿河湾にせり出した薩埵山を中腹まで登って薩埵峠に立てば、広重の描いた絶景をこの目で見ることができる。峠には展望台も整備されている。